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2009年5月 1日 (金)

イスタンブルの東トルキスタン基金

1950年代に東トルキスタン(新疆)からパキスタンを経由し,トルコに移住したウイグル人やカザフ人たちがイスタンブルにいる。彼ら彼女たちはトルコ国籍を取得しているから、ウイグル系、カザフ系トルコ人である。トルコはかつてオスマン帝国で多民族国家であったが、1923年のトルコ共和国独立後にアタチュルク大統領が「トルコ人のトルコ共和国」という国民国家の建設に邁進した。このため非トルコ系のクルド人などは民族性を意図的に消されてきた。最近のトルコはEUに加盟を求めることから、欧州委員会から少数民族の権利を擁護することも求められ、これに答えるため少数民族の権利を認めるようなっている。
 ウイグル系やカザフ系トルコ人たちは、トルコ系であり、トルコの歴史観によればトルコ民族は突厥や古代ウイグル民族に連なるので、1950年代にトルコに移住してからもウイグルやカザフと言う名称を使って相互扶助の協会などを作っている。そのような団体のひとつとして、「東トルキスタン基金」(Eastern Turkistan Foundation)がある。
 東トルキスタン基金のルザ・ベキン理事長は、東トルキスタンのホータン(和田)出身で元トルコ陸軍少将である。ベキン元将軍は1925年にホータンで生まれ、1930年代に家族一族とともに東トルキスタンの混乱から逃れるためアフガニスタンのカブールに向かった。ベキンの伯父エミン・ブグラは東トルキスタン南部のリーダーであった。
 元将軍はアフガニスタン駐在シェヴケト・エセンダル・トルコ大使の支援を受けて1930年代にトルコに移住し、トルコ陸軍士官学校に入学した。その後、士官学校を卒業し、将校として軍務に就いた。陸軍大学も卒業し、朝鮮戦争にも従軍した。将校として昇進し、最終的に陸軍少将にまで昇り退役した。ウイグル系トルコ人として将軍にまで上り詰めたのはベキン将軍だけである。トルコでは軍人が尊敬されていて、ベキン元将軍はウイグル人コミュニティーにおいても信望を得ている。アンカラ大学シノロジー(中国学)教授であった故ベキン教授は兄であった。イスタンブルの東トルキスタン基金は、新疆のウイグル独立運動のような政治活動を支援することはなく、トルコ国内にいるウイグル系トルコ人の親睦団体である。東トルキスタンという名称は、中国では分裂主義を扇動するとのことで、この名称を使用することを禁止している。ベキン理事長との会話では、イスタンブルの中国総領事館は東トルキスタン財団の活動に注目しているとのことであった。元将軍はパーティーなどで中国総領事と会って会話するとき、東トルキスタン基金はオープンですから,来訪をいつでも歓迎すると言っているそうです。しかし、一度も来訪はないそうです。
 トルコ国籍を持つウイグル系トルコ人でっても、中国は東トルキスタンという名称のつく団体の活動を注視している(あるいは、それとなく監視しているのかも)。トルコにはその他にもウイグル人の団体や組織があるが、その多くに属しているウイグル系トルコ人たちは、父祖の地である東トルキスタン(新疆)への関心があるが、現地の新疆のウイグル人との親戚との交流はあまりない。それでも、いろいろなツテを利用してトルコに留学するウイグル人たちを、同族意識からか支援している。
 トルコに留学しているウイグル人たちの中には、トルコでの生活や習慣に慣れてくると、新疆に戻らずトルコに定住する人やトルコ国籍を取得する者たちも多くいる。新疆ウイグル自治区は、中華人民共和国の一部であり、ウイグル人は少数民族としてある程度優遇されているが、トルコにおいて自由を享受したウイグル人たちは新疆に戻りたがらない留学生たちも多い。

 トルコは中央アジア・コーカサスやロシア連邦内のトルコ系諸民族をトルコ政府給費や私費の留学生として多く受け入れいる。中国政府は、ウイグル人がトルコに留学することにより、新疆に汎トルコ主義やイスラム主義運動が広まることを警戒している。ウイグル人に対するパスポート発給を制限するなど、ウイグル人がトルコに留学することを見えない形で阻止している。中国政府がウイグル人のトルコへの留学を阻止しようとする背景には、中国政府の新疆統治や少数民族支配に対する自信と漢民族としてのウイグル人への優越感があるのにもかかわらず、ウイグル民族運動やイスラム原理主義に対して、不信感と警戒感が強いからであろう。

東トルキスタン基金はイスタンブルのアクサライ区役所の近くにある。ここに付属している食堂という雰囲気のカンティンでは、ラグマン(肉うどん)が食べられる。イスタンブルでラグマンが安く食べられるのはここぐらいかもしれない。

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