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2009年6月18日 (木)

慶應義塾大学語学研究所編 『世界の言葉 何を学ぶべきか』

Sekainokotoba_3 慶應義塾大学語学研究所編『世界の言葉 何を学ぶべきか』(慶應出版社,昭和18年初版,昭和19年第2版)

戦時中に出版された本で,いまでは忘れられてしまった本がある。この本は何語を語ぶべきかを,専門家が簡明に説明している。執筆者たちは,戦後活躍し,後に碩学と言われる,錚々たる研究者たちである。主な執筆者を挙げてみると,

北京語(魚返善雄),チベット語(渡邊照宏),ビルマ語(矢崎源九郎),安南語(松本信廣),蒙古語(服部四郎),アラビア語(井筒俊彦),梵語(辻直四郎),巴利語(水野弘元),ロシア語(井桁貞敏),ギリシア語(高津春繁),独逸語(関口存男),英語(西脇順三郎)など。

戦時下という時代状況もあろうが,執筆者がみは言語を語るのに熱いのである。イスラム学で世界的な研究者になる,若き日の井筒俊彦もアラビア語に対する熱い想いを語っている。多くの言語に通じていた井筒俊彦は,アラビア語以外に,トルコ語,ヒンドスターニー語,タミル語についても書いている。アルタイ諸語に通じていた言語学者の服部四郎が執筆した蒙古(モンゴル)語に関する説明は,通時・共時的に要領よくまとめられ,いま読んでも参考になる。

こういう執筆者の一人でいいから,外国語を学んでみたかったと思う。

この執筆者の多くは,戦後に研究社から出版された『世界言語概説』(2巻)でも執筆し,各言語についてより詳しく客観的に冷静に説明している。学問への情熱を読んでいて感じるのは,『世界の言葉』の方である。いま,言語や語学の本を読んでいて余り面白いと感じないのは,変に客観性をいいものだと信じていて,学問への情熱を感じないからであろうか。

ところで,戦時中にはビルマ語を執筆していた矢崎源九郎は,戦後はデンマーク語などの北欧語の専門家となり,アンデルセンの童話を翻訳している。戦時中にビルマ語を研究していたのは,時代の要請に応えるものであったためであろうか。テレビに脇役としてよく見かける,俳優の矢崎茂は彼の息子である。

この本は,アジアの言語の紹介に力を入れている。この本で抜けているアジアで重要な言語は朝鮮語である。当時,朝鮮半島は日本の植民地で内鮮一体化と皇民化を推進していて,日本語教育を進めていた。そういう時期では,朝鮮語は日本帝國内の言語で世界の言語として学ぶという意識はなかったか,あるいは意識的にはずされたのであろうか。

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